2011年2月15日火曜日

綿





綿の実です。
タイ中部のチャイヤプム県で栽培されていたものです。

1990年頃でしたか、タイ政府は新しい換金作物として、綿の栽培を奨励しました。最初の年はまあまあの収量と収入がもたらされたのですが、年ごとに収量が落ち、5年も植えていると、農薬代と化学肥料代の方が高くつくようになり、みんな脱落して、そのときの綿ブームは、失敗に終わりました。

私は、タイの農村で泊めていただくとき、いろんな農作業を手伝うのが好きでした。
男性が棒で突いて開けた穴に、女性たちがトウモロコシの種を落としていく仕事など、身体を二つに折っているので、汗が胸から顔へと流れ、目にも流れ込みましたが、それでもみんなで競争して種を置くのは、楽しいものでした。

でも、綿摘みだけは嫌いでした。
芽が出てから収穫までに、7回も殺虫剤をかけたというのに、実という実には、赤くて大きい虫が、3匹も4匹もついているし、なんだか手ざわりがねっとりして、あまり気持ちのいいものではありませんでした。

綿は、根には水分がたっぷりあり、雨の少ないところを好みます。インドのグジャラートとか、スーダンのゲジラとか、沙漠のようなところを灌漑したところでよく育ちます。しかし、そういう国家規模の灌漑地で換金作物を植えるということは、そこへ流す水を、本来流れていた地域から取るということであり、しかも綿は食料ではありませんので、人々の生活を圧迫し、食糧不足を招くということにもつながります。

「綿は自然素材だからいい」といっても、無闇矢鱈に消費すれば、誰かがしわ寄せを受けていることになってしまいます。




岡崎に住む友人からいただき、我が家で育てた三河木綿の茶綿と、チャイヤプムの綿と比べてみますと、(近年)品種改良された、チャイヤプムの綿の方が、ずいぶん大きいことがわかります。

品種改良が、高収量や木の矮性化を目指していることは知っていましたが、




玉が四つに割れる綿と、三つに割れる綿があることは、知りませんでした。

ちょっと見にくいのですが、綿の膨らみ具合からわかるように、チャイヤプムの綿は、外皮が四つに割れています。




それに比べて、三河木綿の外皮は三つに割れています。綿を取り除いてみたところです。




花が咲いて、綿の玉ができたとき、綿の入った部屋が三つあったのか、四つあったのかという違いがあったのでした。

綿はインド原産ですが、多湿の日本では育ちにくく、やっと栽培できるようになったのは17世紀のことでした。それまで、庶民は冬でも麻、苧麻、葛などの布しか着ていなかったのですから、冬の寒さはこたえたことでしょう。




綿の種をとる道具です。
これはカンボジアのものですが、日本の種とり器も、タイの種とり器もそっくりです。
織物の道具など、他の道具に比べて、綿の種とり器ほど、お互いによく似ているものをあまり見たことがありません。





この左のネジで、二本の棒を回しながら、右の丸棒のところに、種のついた綿をくぐらせます。すると、種が棒と棒の間を通れないで、手前に落ちるという仕掛けです。




一つの三河木綿の綿には、22個の種が入っていました。


4 件のコメント:

  1. 綿につく虫って、やっぱり実を食べる?そんなにおいしいのでしょうかね??
    いもむしですか?なんかとても気持ち悪そう・・・
    となるとオーガニックの綿などは本当に栽培が大変大変なんでしょうね。

    コットンは、よくクリスマス時期に生花コーナーに売ってますが、このタイ産のもののように大きいものですよね。

    三河木綿、味がある色合いですね。素敵!育てられるんですね日本でも。

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  2. toki-sappさん
    虫はいも虫ではなく、ゾウムシのような虫です。でも色はスカーレット、真紅です。
    品種改良種は、農薬・化学肥料の散布を想定していますから、オーガニック栽培は難しいかと思います。かといって、その土地その土地に合わせてきた綿なら、収量が悪くて、採算は合わないでしょうね。
    三河木綿も他の綿も、白いのや茶色いのがあります。染めなくても模様織りできます。
    三河木綿の白いのももらったのですが、失敗してなくしました。
    灰をいっぱい入れてやったのですが、足りなかったみたい、綿は酸性土を嫌います。

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  3. 綿の実にもバリエーションがあるのですね。
    たしか三河の西尾市には、漂着した崑崙人が綿を伝えたという神社があります。綿神神社だったかな??不確かな記憶ですが。

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  4. Shigeさん
    綿は最初は9世紀に日本に紹介されたらしいのですが、育たなかったようです。だから長い間、本当に貴重品だったのですね。
    アメリカの開拓時代の写真を見ると、まるで木のように丈が高い綿です。いろいろな種類があったし、品種改良もいろいろされてきたようです。
    アメリカでは綿摘みのために奴隷貿易に拍車がかかったとか、インドではイギリスが工場製の木綿を売ろうと、ベンガル人の織子の指を切ったとか、悲しい話もいろいろつきまとっています。

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