Kさんの家では一度火事を出したことがあるそうです。そのとき、家はほぼ全焼しましたが、古い桐の箪笥は燃え残りました。
「えっ、どうして桐の箪笥だけ燃えなかったの?」
「どうしてだろうね。桐は油を含んでなくて、燃えようがなかったのかもしれない。洋タンスなんかは、火が飛んできたら、すぐに穴が開いて燃え上がってしまったけれど」」
そんな不思議なことがあるのでしょうか。
「それから、水をどんどんかけたんだけれど、引き出しはぴったり閉まっていて、水が入らないから、中のものは全部無傷だった」
「へぇぇ!」
「ありふれた、古ぼけたタンスだったけれど、すごいねぇ」
確かにすごい話です。
さてそのKさんに、庭を案内していたら、
焚き火場に積み上げた桐の枝から、新芽が出ているのが目につきました。
これは、二週間以上も前に切って積んでおいた枝です。
新芽だけではなく、蕾からは花も咲いています。
何という生命力。
そういえば、これも先日来ていたSくんが、昨年台風で倒れた桐の木から葉が出ていると教えてくれたのを思い出しました。
「見間違えたんじゃないの?」
「間違えませんよ」
「まあ、根元は皮一枚まだつながっているからな」
と、夫。
私は半信半疑のまま、確かめるのを忘れていました。
見に行ってみると、やはり葉を出していました。
皮一枚つながっていると言えば、つながってはいますが...。
桐の木はもろく、枝もすぐ傷ついて枯れます。大木が突然倒れたのを見るのも二度目です。
それなのに、どうして切った枝から葉を出しているのでしょう?
どうして火事のとき、焼け残るのでしょう?
とっても不思議な木です。
伐った木が芽吹くのはキリだけではありません。クヌギとか、よく見かけます。生命力の強さを実感して敬意を表したくなります。
返信削除実家の家を壊した時、おばあちゃんの桐のタンスを運び出したっかったけれど、置く場所がなくて断念しました。ああもったいない~!
mmerianさん
返信削除クヌギも芽吹きますか。幹を切っても切ってもひこばえが出てくるのはよく見ますが。
桐のタンス、小さいころは引き出しを閉めると、他の引き出しがすっと出てくるのがうっとうしかったりしますが、それほど機密性に富んでいたというわけです。
まあ、昔も嫁入り道具だったのでしょうけれど、今では買えないお値段のよう、職人さんが減っていくのが残念ですね。
桐のたんすには様々な伝説がありますね。オレは工芸科の出身ですから、よく聞きました。金庫の内箱は桐製で、材の中に空気層が多いために断熱効果が強く、大火にあっても中のお札が燃えないそうです。
返信削除あと湿気を吸ったり吐いたりするので、梅雨時には水分を含んで密閉状態になり、秋の乾燥期には小さくなって、空気を通すとか。
Shigeさん
返信削除この前貰ってきた古い箪笥も、外は杉ですが、引き出しの中は桐でした。軽くて使い勝手がいい上に、伸縮して中のものを守る、そんな材を先人はよく見つけたものです。
それにしても火事で燃え残ったというのは驚きです。
最近の安い桐箪笥は中国製ですね。縦長の書類入れを一つ持っていますが、引き出しを閉めると、ほかの引き出しが開く、なんてことはありません(笑)。