2013年2月4日月曜日
ココヤシ
先日、二人の客人がありました。
女性が外房出身と聞き、
「行きたいなぁ」
と思わず言ってしまったら、夫が
「外房は行ったじゃないか」
と言います。
いえいえ、外房というより、北東の突端の犬吠崎に行ったにすぎないので、もっと南下したい、南房総の方まで行って椰子の実が拾いたいと言うと、
男性が、
「ぼく拾いましたが、そんなに椰子の実を拾うのは難しいのですか?」
と口を挟みました。
「えっ」
そうそう、彼は鎌倉の稲村ケ崎に、大正13年(1924年)に建てたという古い家を買って住んでいて、今度リノベーションするので、その参考になればと我が家を見に来ていたのです。
家から海までは歩いて三分と聞いていたのですが、彼と浜辺を結びつけることは、何故かまったく忘れていたのでした。
「えっ、稲村ケ崎で椰子の実を拾ったの?」
「はい。朝散歩していたら落ちていて、重かったんで芽が出るかと思って拾って来て、庭に転がしておいたんだけど、芽は出ませんでした。椰子の実って、どこの浜辺にも転がっているのかと思ってました」
「ええっ」
うらやましいこと、一度でいいから拾いたいものです。
東南アジアで暮らしていたときは、ココヤシは最もありふれた植物で、どこに行っても植えてありました。
家の周りに植えているのはともかく、プランテーションであまり植えすぎると、植生が貧しくなると、むしろ批判的に見たりすることもありました。
ココヤシは葉も実も樹液も茎も殻も役に立つ有用植物で、丈がまだ低い時から実をつけます。
タイでは、集落に生えるココヤシの高さで、集落の出来た年代が、おおよそわかるほどでした。
ココヤシは丈が高くなると、登って実を落とさなくてはなりません。南タイではお猿を使って実を採ることが知られていますが、たいていは子どもや若い衆が登って採ってきてくれます。
幹は甘いのか、赤蟻が群がっています。その赤蟻に刺されると飛び上るほど痛いのですが、驚くことに、彼らはあまり刺されないのです。
そんなありふれたココヤシですが、日本まで流れ着くと、また別の物語が生まれます。柳田國男が伊良湖岬で拾った話は有名ですが、縄文の頃から拾われていて、いろいろな器などに加工されていたというのだから、ロマンがあります。
家にある、ココヤシからできたものの数々、どれも実用品です。
右上の外皮まで丸ごと利用している容器は、保温のためにお茶の土瓶を入れる容器です。これはラタンでしっかり覆っていますが、普通ココヤシそのままで、カンボジアの農村では、ごくごくありふれて見られるものです。
そうそう、犬が家に入って来たとき、足の汚れを落とすのも、ココヤシのマットです。
春さん、今日もココヤシがごろごろ落ちていました。こっちでも珍しいものではありません。種類がいくつかあるのが気になるところ。いくつあるのでしょうね?
返信削除mmerianさん
返信削除げぇぇえっ、ごろごろですか?あぁ、茨城に居を構えないで高知にすればよかった!(笑)。友人が実家が空き家になっているから使わないかと言ってくれたのですが(笑)。
ココヤシは基本的には一種類ですが、栽培作物ですから、コプラが多いもの、ジュースが甘いもの、実が小さいものなど、いろいろ改良されています。また、流れ着くのは、自然に落ちたものより、ジュースを飲んだのを捨てたものの方が多いでしょうね。上の方がパカッと切ってあるものがそうです。浜辺でただ捨てるのもあるだろうし、保存のきく飲料なので、船にの乗せて、それを捨てたのもあると思います。小ぶりで外皮をほぼ取り除いて、表面をあぶった殻も漂着するでしょうか?これが甘くて最高においしいのです。
水彩紙に描かれたココヤシの絵、春さんの絵ですか?上手いなぁ~!
返信削除黒潮の洗う渥美半島の初夏から秋、対馬海流が近寄る福井の晩秋から冬、ココヤシは珍しい物ではなく、ふつうの漂着物です。加工されたものは少なく、丸ごと漂着するのがほとんどです。
Shigeさん
返信削除すみません。本からのコピーですm(_ _;)m。もう長い間絵を描いたことがないもんで(汗)。
海流で時期も決まっているのですね。
どなたかのブログで飲料にした後のココヤシを見ましたが、それは珍しい方で、ほとんど丸まま漂着するのですね。
それにしてもお逢いしたい(笑)。
あらら、コピーなんですか。
返信削除水彩紙の目が出ていましたので、てっきり描かれたのだと。
波崎あたりなら、ふつうに漂着してると思います。一度いかれてはいかが?
Shigeさん
返信削除装飾的な絵を使いたいと思ったのだけれど、見つからなくて。『TROPICAL FRUIT』という本から写したのですが、よく表した絵でしたね。低くて実が鈴生りの木も、三枚目の感じもそっくりでした。
波崎に初夏に行ってみます。