「取ったりしないから、引きあげたら」
「はい、はい」
でも、鋸で作業台ががたがた揺れると、やっぱりおちおち食事できません。また、隠します。
「あれ、落っことしちゃったの」
「ちゃんと持ってるよ」
「どれどれ」
反対側に回ってみると、確かにしっかり抱えています。
「あっ、落ちる!」
「そんなへまはしないよ」
「口が小さいね」
「余計なお世話だ」
「けっこうおいしそうね」
「えっ、気にすんな。たいしてうまくないよ」
「ふうん」
私はまた鋸を使って、台を揺らします。
「あぶない、あぶない。獲物を取られちゃう前に逃げよう」
「鎌が一つ使えないと、歩くの大変だね」
「まぁ、なんとかね。後ろ足で踏ん張って、前足で進むから。鎌も一つは使えるし」
「そう言えば、後ろ足はずいぶん踏ん張っているね」
おちおち食事ができないかまきりが退散です。
「身体が曲がっているよ」
「なかなか、つかまるところがなくってさぁ」
「じゃぁな。あばよ」
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