不徳の致すところにより、入院していました。
その顛末は、もう一つのブログに記しました。やれやれでした。
入院中は四人部屋にいましたが、耳の遠い方が二名いて、みなさん大きな声で話されるので、お見舞いの人との話、患者さんどうしの話、看護師さんとの話などなど、聞くつもりでもないけれど、ほとんど聞こえてしまいました。
その中で印象的なのが、Kさんでした。おん年93歳で運転歴50年。これまで無事故で来たのに、脇に車をぶつけられ、左足を折って入院されていました。
単純骨折なのか、固定して直す方法を取られているので、寝たり座ったり、一日一回リハビリに行ったりという入院生活で、二ヶ月以上かかるようでした。
Kさんの車にぶつけたのは、まだ二十代の男性だそうで、親に600万円もする車を買ってもらって、ぶんぶん飛ばしていたとか。
「本当に軽くて良かった」
というのが、やもめになって、Kさんと二人で暮らしている、一人息子さんのお気持ちでした。
高齢者の多い病院では、私の母同様、独りよがりの人が多いのが特徴です。まだ治りきっていないのに、退院予定を自分で決めて、その通りいかないたびに、がっかりする人、愚痴や不平ばかり言っている人、ちょっとよくなると、他人のことも気にせずおしゃべりばかりしている人などなど。
やはり同室のHさんは、転んで足を折って入院したのですが、手に鎌で切った古傷があり、それも手術してもらっていました。長年放置していたので筋肉がすっかり痩せています。
回診に来たお医者さまに、
「放置しておいたので、筋肉が盛り上がるまでに一年以上かかります」
と言われ、喜ぶどころか、「回復には一年以上かかる」というところだけが耳に残って、
「こんなことなら、手術しなければよかった」
と、がっかりして、誰彼にとなく愚痴ります。手術しなければもっと悪くなるばかりと言われても、心に届かないようでした。
さて、93歳のKさん。いつもお見舞いの息子さん、孫娘さんへの感謝を忘れません。看護師さんやケア・マネージャーさん、ワーカーさんへの感謝も忘れません。耳に入ってくる話では、毎日お化粧も欠かさないようでした。
私は二週間寝たきりだったので、お顔も拝見できませんでしたが、起き上がれるようになってお目にかかったら、好奇心の宿った眼をした、きびきびした、素敵なおばあちゃんでした。
70代、80代のおばあちゃんたちがとろんとしているのに、Kさんはおしゃれして、毎日、差しいれの新聞も欠かさず読んでいました。
人はどんなにでも年を取れるなぁと思ったことでした。
両親の親、祖父母の姿をみているのでとてもよく分かります。同じ昭和一桁世代でも、片方の婆さんは人任せが大嫌い、孫相手にも厳しい人ですが、物や趣味はとても大切にします。もう一方の婆さんは寝て食べていれば幸せな人間。 だからすぐ病気になるのに、嘆くばかりで何もしません。そして「自分が」要らないものはすぐ燃やしてしまう…(笑)昭和の時代を生きてきた世代に私たちがとやかく言うつもりはありませんが、人間性って、世代のせいばかりではありませんよね。
返信削除topcatさん
返信削除あはは、おもしろいですね。やはり人間、「死なない姿勢」より、「生きる姿勢」が大切だと思います。「死にたくない」じゃなくて、「こう生きる」という。
でも食べることに困らなくなると、それに反比例して、「生きる姿勢」が弱くなるような気がします。
きりりと生きている人を見ると、誰もがすがすがしくなりますね。