梅をいただいちゃおう！

我が家への坂道を下ると、梅林があります。
長い間売りに出されていましたが、なにぶんにも中途半端な土地、整備されている土地を求める人にはワイルド過ぎ、一から開拓していこうという人にとっては、道路際で物足りないということで、とうとう売れませんでした。

きれい好きで、いつも梅林をきれいに手入れしていたSさんは、精神を病んで、この十年入院したままです。Sさんの入院後、上の妹さんがシルバーさんを頼んで手入れしていましたが、その妹さんは亡くなられてしまいました。
下の妹さんもいたのですが、家を畳んで、どこかへ出て行ってしまいました。
というわけで、梅林はこの三、四年、全く手入れされずに、荒れ放題になってしまいました。

しかたなく、年数回ですが、道端の草だけは私が刈っています。
中の方までは刈れませんが、道端だけでも１００メートルほどあります。ちょっと目を離すと、セイタカアワダチソウやコウゾは生える、クズは伸びるで、道も侵食されてしまいます。 

シルバーさんが手入れしていたころ、
「よかったら採ってください」
と言われましたが、泥棒みたいで、梅をいただいたことはありませんでした。

さて、一本だけ、道路から手の届くところに梅の木があります。

梅がたわわに実っていますが、毎年、誰も採らないまま、むなしく落ちています。
「草を刈っているし、いただいてもいいだろう」
と、ここに来て初めて、道から手を伸ばせる分だけいただきました。

あっというまに、六キロも採れました。

「こんなに飲むかなぁ」
全部梅酒にしてしまいました。