
私の住んでいる八郷には、古い民家がたくさん残っています。中でも、私たち夫婦の一番のお気に入りは、Wさんの家です。
Wさんは、旧家の誇りと、並々ならぬ愛情を持って、農業の傍ら、茅葺屋根や庭の手入れをしていますが、そんなWさんの気持ちが伝わってくるような家なのです。
我が家にお客さんがあり、どこかへ行ってみようかということになったとき、足が向かうのはたいていWさんの家です。何の連絡もしないで行きますが、会えば、Wさんは必ず木戸を開けて、手入れの行き届いた庭に招じ入れ、障子を開けて、お座敷まで見せてくださいます。
Wさんの家は、江戸時代まで、足の病の平癒を願って、足尾山に登る、足尾山信仰の人のための旅籠をやっていました。明治に入って、旅籠は閉じたのですが、外観を損なわない程度に改築しながら、現在も住み続けていらっしゃいます。

庭には、小川から水を引いてつくった池があり、植えてあるコウヤマキ(高野槙)やヤマモモは、樹齢を悠に100年は越えて、巨木になっています。

そのコウヤマキの木の下に、落ちていたのが、こんな実です。
Wさんの家のコウヤマキの美しさに魅せられて、我が家にも、コウヤマキを植えたのは、5年ほど前のことです。しかし、他の木に比べると成長が遅く、まだひょろひょろで、高さは2メートルほどしかありません。

登山口の旅籠