2019年9月25日水曜日

北欧の浮き

子どものころから、魚釣り用の木の浮きが好きでした。
轆轤で挽いた、丸や紡錘形の浮きで、赤、黄、白などの色が塗ってある、手づくりのものでした。
学生時代には、港町などに行くと釣り具屋さんを探して、気に入った形の浮きを見つけて、ハンドバッグ代わりに持ち歩いていた魚籠にぶらさげたりもしていました。
ガラス浮きは大学1年のとき、友だちと行った伊豆下田漁港の漁具屋さんで、初めて目にしました。こんなきれいなものがあるんだと感激、そのとき買ったガラス浮きは、今も大切に持っています。

白樺の木の皮をはいでつくった漁網用の浮きを知ったのは、Shigeさんのブログででした。ロシアや北朝鮮で使われているものらしい、北海道から福井のあたりまでの日本海岸に漂着します。
いつか白樺の浮きを手にしたいと思うようになり、思いが通じてShigeさんに送っていただいて実物を目にしたときは、天にも昇る心地でした。
その後、若狭の海岸では初めて白樺の浮きを自分で拾いました。そのとき、一緒にビーチコーミングをした人が、あとのモビールをつくる時間に、それを輪切りにして使っていましたがとんでもないこと、私は一つ残らず大切に持ち帰りました。
どんだけ白樺の浮きが好きなのとあきれた北海道ののらさんが、漁網ごと打ちあがっていた浮きをたくさん送ってくれ、一挙に白樺の浮きの長者になりましたが、今回の北海道への旅でも2つばかり拾いました。私の白樺の浮き熱は今も衰えることなく続いています。
そんなおり、ネットでスウェーデンの白樺の浮きを見つけました。


日本人骨董商のKさんが、スウェーデンで見つけたもの、普通は真ん中に石が包み込まれた魚釣りの錘(おもり)だそうです。
ところがこれは、石が入ってなくて中まで白樺なので、Kさんは不思議がられていました。
よく水に浮くので、これは錘ではなくて浮きに違いありません。


北欧の漁師さんたちは、白樺の樹皮の特性をよく知っていたはずです。
皮をはぎさえすれば勝手にくるっと丸まって、それだけで浮きにできるのに、どうしてこんなに手の込んだ浮きをつくったのでしょう?
そんなことからも、この浮きは、たくさんの浮きを必要とする漁網用の浮きではなくて、釣り人用の浮きだったのでしょうか?

また、石を白樺に包んだ漁網用の錘(おもり、沈子)は、漁師さんが自分でつくることができる、最も身近な錘だったことでしょう。


浮きの一面には釘が打ってあり、字が書いてありました。
  

厚みはこんな感じです。


日本海側の海岸に漂着するロシアか北朝鮮の白樺の浮きは、最近では減りつつあるそうです。
次第に発泡スチロールの浮きなどに取って代わられているのでしょう。


ネットで、フィンランドの浮きを見つけました。
真意のほどはわかりませんが、18世紀のものと書かれています。北欧にも木の浮きもあったのですね。


北海道には白樺がたくさん生えているのに、日本には白樺の浮きをつくる伝統はなかったようです。
今回、北海道に行ったときに資料館などで見たのは、木の浮きとガラス浮きでした。






8 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

 春姐さん詳細な説明楽しく読みました
魚具類の補修跡を見ても丁寧なので驚く程です。
こちらでは単品ですが一連物が流れてくるようですね
もう採取には行けないので在庫品で楽しんでいます。

さんのコメント...

昭ちゃん
玄海灘でも白樺の浮きが拾えたということですか?ロマンだなぁ!
石井先生の『漂着物事典』には木の皮でできたものとしては南方系のマングローブの皮の浮きしか載っていなかったので、てっきり白樺の浮きは九州まではいかないのかと思っていました。
しかし、いずれにしても21世紀は、プラスティック製品オンパレードです。漁網も、昔は腐りやすかったけれど、今では腐らず最大の海洋ゴミとなってしまいましたね。

昭ちゃん さんのコメント...

昔は渋で漁網を煮ていましたね
漁港に行くと大きな窯が残っていました。
明日白樺浮きアップします。

さんのコメント...

昭ちゃん
そうそう、いろいろなところで柿渋の匂いはしていましたね。
漁師町の匂い、フナ虫、懐かしいです(^^♪
白樺浮き、楽しみにしています!

昭ちゃん さんのコメント...

春姐さん今の時代どこも匂いと音が消えてしまいました。
我が家の近所でも子供たちの通学時の賑やかさ、小学校が通ると中学生の集団
出前授業で教えた子供たちが中学になり
「昭ちゃん先生の家はここバイ」っと、
市場がスーパーと呼ばれ全てがラップ包装
呼び込みの声もなくレジの音だけ黙々と買い物です。

さんのコメント...

昭ちゃん
人の世は移りゆくものですよ。万葉の時代から、「今どきの世相は」と嘆いたりしています。
子どもの声は集団になるとかん高くてハチの巣をつついたみたいですね。我が家の下の道を遠足の子どもが通ると、遠くから近づいてくるのがすぐわかります。大人の集団が通っても気づきませんが(笑)。

hatto さんのコメント...

編み込まれた浮きは海水に浸けても緩むことのない特別な編み方があるんでしょうかね。釣り糸の結び方でも色々な手法があり名前もついているので漁師さんがそれぞれ工夫をして漁獲高を上げたのでしょう。昔の漁具の中に「弓角」という回転しながら水中を周り動き魚をおびき寄せる擬似鈎があるのですが、春さんのお手元に資料はありますか?

さんのコメント...

hattoさん
あの浮きは、きっちりつくられていて手になじみ、ちょっと重みもあるのによく浮く素敵な道具です。きっと長持ちもしたと思われます。
弓角は知りません。蛸に似せたいさりも知りませんでした。
いつか海の博物館に行ってみたいです。