「拾ってきたよ。好きだろう?」
と夫がザクロをくれました。
日々の生活に無頓着で、何もかも忘れてしまう、というか覚えようともしていない夫ですが、ザクロを見たとき、私がザクロを好きだということを、奇跡的に思い出したようでした。
ザクロを手にするのは久しぶり、さっそく割ってみましたが、いつから落ちていたのか、一つは半分腐っていて、もう一つは全部腐っていました。
そのことを夫に話すと、あっさりと、
「じゃぁ、生っているのを採ってきてやるよ」
と言います。
「それって、泥棒じゃない」
「いや、誰も採っている気配はないね。腐っていっぱいおちているし」
というわけで、数日後、夫が約束通りザクロを採ってきてくれました。
いつ見てもきれいなルビーのような実、あっという間においしくいただきました。
中東のザクロと違って種は固いので、吐き出さなくてはなりませんでした。


