2012年3月17日土曜日
魚のモビール
夫は月に五本、本屋さんからDVDを借りています。
自転車をこぎながら見たりしていますが、先日、
「これ見ない?」
とタイ映画、『ナンナーク』 を手渡されました。
ナンナーク(ナーク夫人)は、タイではよく知られた話ですが、美しい映像になっていました。
1800年代、若いナークは夫のマークと、バンコク郊外のプラカノンの村に住んでいましたが、マークは徴兵されて内戦の戦地に赴き、離れ離れになります。そのときナークは身ごもっていました。
マークは戦地で傷を負い、死線をさまよいます。同じころ、ナークは難産で、ついに赤ん坊ともども死んでしまいますが、マークは奇跡的に助かり、やがて村に帰ってきます。
精霊(日本語字幕では幽霊。難産で死んだ者は、ピー・プラーイという悪霊になる)になったナークと赤ん坊はマークを迎え、一緒に暮しはじめます。しかし、ナークの死んだことを知っている村人がナークの精霊を恐れて騒ぎ、精霊は邪魔されないよう次々と村人を殺したりします。
やがて、そんなことをしていても幸せにはならないと高僧に諭されたナークは、成仏してしまうという物語です。
たった、150年ほど前のことですが、バンコク郊外の村の、えもいわれぬ美しいたたずまいに魅了されます。家は水路に面して開いていて、みな舟で行き来しますが、水路には両岸から、ニッパヤシが覆いかぶさっています。
木造の小さな家には、竈(かまど)のほかには魚を捕まえる銛(もり)や筌(うけ)などの漁具、木を切る手斧、キンマの道具があるくらいですが、米をつくり、魚を突き、エンツァイを採ってきて、人々は豊かに暮らしています。
さて、帰還したマークが、赤ん坊のためにニッパヤシの葉から、魚のモビールをつくって、ゆりかごの上に吊るす場面があります。
素敵なモビールだったので、棕櫚で、ちょっと真似してみました。
棕櫚の葉は、中心の固い芯を取り除いてリボンにします。
その葉二枚を、お互いにくぐらせて、
風車のようにします。
裏返すと、こんな感じです。
裏を上にして、それぞれを折って、最後の一枚だけくぐらせると、この面も風車というか、小さい正方形が四つ並んだ形になります。
次には二枚だけ折り、二枚目は葉の下をくぐらせます。
魚の形になってきました。
ひれの形に切って整え、六匹つくります。
棕櫚の葉柄を削って、細いひごをつくります。
テグスを、魚の身体に対角線になるように通し、細いひごの両端に吊ります。
当時、普通の糸を使っていたと思われますが、扱いやすいテグスにしました。
これを二つつくり、針の上にひごを乗せてみて、重心を取りながらひごの中央に穴をあけ、別のテグスを通し、そのテグスに魚を一匹通してから、長いひごの端に吊ります。その魚は、途中に結びこぶをつくり、タイのジュズダマを通してその上に乗せ、位置を固定しました。
ひごには、針でテグスを通しましたが、短い端の方をしっかりつまんで、ゆっくり通すと、ひごが割れません。
かなり華やかなモビールのできあがりです。
映画では、ひごが十分しなっていましたが、これはピンとしすぎています。
葉柄は皮だけ残すようにしてかなり薄くしたつもりでしたが、少々薄さが足りないようでした。
それにしても、昔は精霊などの棲むところがいっぱいありました。今ではどこも開けて明るく、無味乾燥、精霊の棲みにくい世になってしまいました。
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