とうとうその日がやってきました。
我が家とひろいちさんの畑との境に植えてある桐の木は、倒れると我が家を直撃するため、
「近々切るから」
とひろいちさんに言われていたのですが、大雪で今日まで延び延びになっていたのです。
お風呂から見えるこの木には、特に愛着がありました。
犬の小春が不慮の事故で死んで以来、一年ぐらい立ち直れない日々が続きましたが、この枝の張り方の一部が小春の顔に見えて、朝お風呂に入るたびに、呼びかけていたのです。
五本の木のうち、この木は倒れても我が家を直撃しません。
でも、人を頼んで木を切ってもらうひろいちさんに、
「あの木だけは残して」
と言うすじではないのです。
ひろいちさんの桐の木から種が飛んで自生したと思われる、我が家の周りに生えていた桐の大木は、ここに来てから台風や落雷で三本も、あっけなく倒れました。ひろいちさんの桐の木も幹がうろになっていて、いつ倒れてもおかしくない状態です。
残す道はありませんでした。
どの木も、どちらかと言えば我が家の方に傾いているので、木を切る人は遠くからユンボ(パワーショベル)で引っ張りながら切ります。
たくさんのコゲラたちが毎日つついていた桐の木が、倒れた瞬間です。
ここに来て十三年、初めての桐の木のない姿です。
葉や枝が落ちてうっとうしいこともあったけれど、花が咲き、生活を彩ってくれて桐は薪にもならず、放置されて、ただ朽ちるのを待つばかりです。
空は広くなったのですが.....。
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