2017年6月1日木曜日

グミ

八郷に土地を見に通っていたころ、今の我が家の敷地の周辺は、足の踏み入れようがないほどの荒れ地で、入り口に立っても、高い草に視界を遮られて、西に広がる山並みも見えませんでした。

化石燃料が普及するまで、山の落ち葉、枯れ枝などは集め尽くされていて、
「昔は山を裸足で歩けたほどだった」
と、年寄りたちが口々に語ります。
地主さんが木を伐ると、「その根をもらってもいいか?」と掘っていく人もいたそうです。鍬とスコップで根を掘るのは大変な労働でしたが、根は火力が強かったので、好まれました。
そんな、手の行き届いた大地はやがて放置され、実生で生えた雑木が開墾した畑跡にも林をつくり、そのすべてが、フジ、そして篠竹やクズに覆い尽くされて、人が入るのを拒否していました。

そんな土地に住むために、私たちは草刈りや蔓切り、灌木を伐ることから始めたのですが、林の中を彩っていた、ガマズミ、ヤブデマリ、マユミ、モミジ、ムラサキシキブなどは残しました。

残した木の中には、隣のちよさんが上ってきて、
「これはグミだ。よく残したなぁ。子どものころ、よく食べた」
と懐かしそうにした木もありました。




ガマズミの奥の、ちょっと葉が丸い木が「グミ」と呼ばれている木です。
しかし、ここは木陰になっていてあまり陽が当たらないせいか、毎年、数えるほどしか実をつけません。

それからも、年々少しずつ開拓を進めるにつれ、グミの木は数本見つかりました。


そのグミの一本に、かなりたくさん実をつけているのを、草を刈っていて見つけました。


図鑑で見ると、ナツグミというのは、もっと葉が硬くて、実にもつぶつぶがあるようですが、これは比較的柔らかい丸みを帯びた葉で、実はほとんどつるつるです。
何というグミなのでしょう?


こちらは、植木屋さんにいただいたタワラグミです。
タワラグミは、鈴なりになる印象がありますが、これはもう切ってしまいたいほど、毎年、ほんの数粒しか生りません。5本くらいあったものを移したりして、今は二本だけですが、二本合わせて採れたのは、10粒ほどでした。
実が緑の時はもっと数が多かったのに、赤く熟れたのは少しだけ、熟れる前に鳥が食べたのかもしれません。


タワラグミと、グミの大きさはこんなに違います。


タワラグミには種がありますが、小さいグミの種があったものは、二つだけでした。
タワラグミには、グミ独特の渋みがありますが、小さいグミにはありません。でも、美味です。
ただ、小さいので子どもならいざ知らず、大人には、摘むのも食べるのも面倒になるほど小さすぎます。

あぁ、タワラグミを飽きるほど食べてみたいなぁ。








6 件のコメント:

kuskus さんのコメント...

この実、ウグイスカグラの実ではないでしょうか?

hiyoco さんのコメント...

赤い実は種が透けてきれいですね!
山の落ち葉や枯れ枝を浚う話。カキ職人の畠山さんの「森は海は恋人」を読んだら、まさに最初の部分にそのことが書かれていて「春さんが言った通りだー」と思いました。広葉樹の山を持っているかいないかで生活が大きく分かれたんですね。

さんのコメント...

kuskusさん
わぁ、ありがとう。ウィキで、花見ただけでわかりました。
ウグイスカグラはスイカズラ科スイカズラ属で、グミはグミ科グミ属、全然違うものでしたね。ずっとちよさんに騙されていました(笑)。
ちよさんはよっぽどウグイスカグラが好きだったんでしょうね、何年か前に息子のひろいちさんが山から大きいのを二本も掘ってきて、庭に植えていました。ちよさんは今では腰が二重に曲がって、デイサービスに行くときも、送迎車に車いすで乗せられています。
図鑑にも載っていたのに、見落としていました。

さんのコメント...

hiyocoさん
そうそう、その通りです。
ところが、落ち葉の積もった山からは確かにミネラルをたくさん含んだ水が流れてくるのですが、いわゆる「里山」は、落ち葉も枯れ枝も一つ残らず取り去った、瘦せ地だったのですね。そこで生き延びてきた木は、落ち葉が積もると、松だけでなく雑木も根元近くから虫に入られて、枯れやすくなります。
まったく自然の山なら、枯れた木が倒れるとそこに光が入って新しい命が生まれて、命をつないでいくのですが、「里山」となると、弱った木にはクズなどがすぐ上り、地面には篠竹が生えて、にっちもさっちもいかなくなります。それを人がきれいにしてやると、鳥が種を運んできて新しい芽が出て、すぐ育ちます。それが「里山」です。
ということは、痩せ地と見える「里山」も、枯れ枝、落ち葉を全部取り除いても、なお豊な土壌があるということ、地形や降雨量などから、こんなに恵まれた土地は(耕しても、耕しても、なお土壌が豊かという意味で)、私の知る限り、地球上でインドネシアのジャワ島と日本列島だけです。
ほかの土地は、長く放置しておくと熱帯林のような豊かな生態系はつくるのですが、再生には時間がかかるし、繰り返す有機物の収奪、つまり耕作や植林には、なかなか耐えられません。
というわけで、里山に暮らす私は、今日も昨年の落ち葉を取り除いてやろうと奮闘しているのですが、そうこうしているうちに篠竹は伸びるし、クズもすきを狙っているし、これからわっとメヒシバが生えてきます。ありがたいことです(笑)。

RAMUNOS さんのコメント...

ちよさんは騙したのではありませんよ。茨城県の県南地方では、ウグイスカグラの実を「グミ」と呼んでいます。子供にとっては、同じような山のおやつですからね。

さんのコメント...

RAMUNOSさん
騙されたは言葉が悪かったですね。失礼しました。
ナツハゼも地方によっていろんな名前で呼ばれているし、とくに子供たちに愛されたものって、地方色豊かな名前があったのだと思います。