コペンハーゲンのイエンスの家に泊っていたとき、
「これ、どう」
と見せてくれたのは、ワインのコルクを束ねた鍋敷きでした。
「あらっ、素敵じゃない。結わえている素材は金属?」
「細い紐を巻いているんだよ」
一見、平たいテープに見えましたが、細いナイロン紐をくるくると巻いてありました。
そうそう、イエンスはヨットに乗っていたので、紐結びは得意なのです。
確か、コペンハーゲンで一番古いレストランだったと思いますが、ワインのコルクをガラスビンに入れて大量にためていました。
また、お洒落な食器や台所用品を売っているお店でも、ワインのコルクを籠にいっぱい入れて、それを飾りにしていました。
そして、アンとイエンスの家でも、食品庫の片隅の大きな籠に、ワインだけでなくシャンパンのコルクもたくさんためていました。
「ははん、デンマーク人はコルクをためる習慣があるんだな」
鍋敷きの他には、コルクが何になるのか見当もつきません。
帰る日が来て鞄に荷物を詰めていたら、イエンスがコルクの鍋敷きを持ってきました。
「重くないから、入るよね」
「ん?まあね」
もらってきたコルクの鍋敷きは、コペンハーゲンで見たのとは違うものでした。
最初に見せてもらったのは、一ヶ所を紐でしばっていましたが、これは三ヶ所で巻いています。
コルクは、40個使ってあります。
鍋敷きとしてはちょっと高すぎるけれど、何かを飾ったりする台になるかしら?
さて、もう一つ、イエンスからもらったものです。
夫はデンマークにいたとき、眼鏡を一つなくしてしまいました。100円眼鏡ですから、なくしてもたいして慌てませんが、うっかり者のこと、旅先で持って行った眼鏡三つを全部なくしたら困ります。
そこで、イエンスが眼鏡に紐をつけてくれたのですが、そのとき、修理七つ道具の入った箱を取り出してきたら、中にこれが入っていました。
「このハートいる?」
「はいはい、もらうわよ」
二つ返事で貰ったのに、そのままにして、私は席を立ってしまいました。
「もしかして、このダイヤモンドのハートはいらないの?」
「あぁ、いります、いります」
返事が多い時は、全然大事に思っていないときです。
このハートは、パチンと留めます。
ピンだったらブローチになるけれど、こうやって留めるものって、どうやって使える?
このハートは、イエンスが道で拾ったものでした。