2013年8月29日木曜日

ソマリアの棘

三十年前に仕事仲間だったSさんが、家族で遊びに来てくれました。ついこの前までペシャワールにいて、十一月からまた、パキスタンのイスラマバードに赴任するそうで、束の間の日本の休暇を楽しんでいました。

外国生活の長いSさん、六歳児の娘にサンダルをはかせながら、「ここは日本なのに、つい、スニーカーを履くときは『中をよく見て』、サンダル履くときは『裏をよく見て』、と言いたくなるんだよね」

わかるわかる、スニーカーをそのまま履くと、中にサソリがいたりして、大変なことになるのです。
「でも、サンダルの裏って何?」
「あぁ、タマリスクの棘が刺さっていないか、裏返して見て、さらにサンダル曲げてみてから履かなきゃ、刺がさったら飛びあがっちゃうからね」
Sさんは、ソマリアには合計で5年もいました。ソマリアは半砂漠、枯れたようなとげとげの灌木が、あちこちに生えています。

私はソマリアにはたった一週間しか行ったことがありませんが、超ラッキー、その間に雨が降ったのです。ソマリアで雨が降るのは、一年に一度か二度です。
首都モガディシュから北の町ルークに行く時は、あたりに生えている灌木は土埃に汚れていて、とても生きている植物とも思えませんでした。
ところが帰り道、たった一度の雨でどの灌木も生き返り、芽吹き、どこもかしこも、緑みどりになっていたのです。


シャーレに入れているソマリアの棘」を取り出してきました。
あまりにも見事だったから採ってきた棘は、当時は確か薄緑色だったと思いますが、23年も経って、すっかり貫禄のある色になっています。
一本の棘の長さは95ミリ、棘の中は空洞で軽く、固くて頑丈です。


ソマリアに生える灌木たちは、一年にたった一度か二度の雨を待ち、雨が来ると一晩で葉をつけて栄養分をつくり、貴重な葉が山羊などに食べられてしまわないように棘で身を守って、半砂漠を生き抜きます。

Sさんは、この棘をタマリスクと呼びます。
ソマリアには確かにタマリスクも生えていたようでしたが、この棘はタマリスクの棘ではなくて、ネットで見つけたマメ科の木の棘ではないかと、私は思っています。


「自動車のタイヤが、毎日十個くらいパンクしていて、朝一番の仕事はタイヤの取り換えや修理だったなぁ。直しても直してもパンクするから、しまいには事務所の中に修理工場をつくっちゃって、やっとなんとかなったよ」
そう、ソマリアではどこをどう走っても棘がタイやに突き刺さり、パンクするのです。

「ソマリアで、サソリに刺されたことあった?」
「二回かな。一回は寝袋の中にいたの」
「ぎゃぁ、最悪ね。もう一回は?」
「盛ってある果物取ろうと手を伸ばしたら、いきなり刺された。もう電気が走るようだったよ」
「それって、大きいサソリ、小さいサソリ?」
「もちろん大きいサソリさ。小さいサソリには数限りなく刺されたよ」
やれやれ、半砂漠の生活は、限りなくワイルドです。




4 件のコメント:

hatto さんのコメント...

ソマリアの棘、昆虫の脚にも見え、、。私は庭に、苔を荒らす猫よけとしてヒシノミを置いているのですが、うっかり自分がサンダルで踏んでしまい、足裏まで刺さったりしてます(笑)折れそうで折れない、、植物の棘けっこう強いですね。

さんのコメント...

hattoさん
猫にヒシ、効きますか?栗のイガなんて、へいちゃらですよ(笑)。
半砂漠の植物すごいです。植物というより、絡まり合った棘のかたまりです。生えたが最後、誰にもそれを取り除く勇気は出ないでしょうね。それでも食べちゃう山羊を除いては(笑)。

hatto さんのコメント...

効き目ないんだとおもいます。昨夜も野良猫が侵入して、食べた物をもどしてました。そうですが、栗のイガもへいちゃらなんですね。知らなかったです!

さんのコメント...

hattoさん
たぶん、犬には効きますよ。犬はとろいですから(笑)。
猫はどうしてあんなにうまく歩けるのか、ものをいっぱい置いてあるところでも、当たらずに上手に歩きます。打つ手があるかなぁ?