2010年10月15日金曜日

本と現実



息子が、東京郊外の広い家から、都心の狭い部屋に引っ越したとき、入りきれないものを預かりました。甘い?いえ、息子の家に、どっさりガラクタを預けていたこともあるので、おあいこなのです。

大切と思われる本は室内に置いてありますが、あとは、庭に積んでブルーシートを掛けただけという冷遇です。息子が何度もさがしていた『世界の文学』が、そのブルーシートの中から、半分はだめになって見つかりました。濡れてかびた本ほど、始末の悪いものはありません。

これを機会に再整理する息子を手伝って、本を仕分け、いらない本をもらいました。




まあ、捨てるにしても、一度は目を通そうと思いまして。




なかに、荒俣宏の本が何冊かありました。
はっと、あることを思い出した私。息子に、
「ねえ、おかしいのよ。テレビの鶴瓶の家族に乾杯で、奄美に行った荒俣宏が、パイナップル畑を見て、『これがパイナップル?初めて見ました。こんな風に生るんですね』って言って、感動しているのよ。どうして?」

荒俣宏の植物図鑑は、私の愛読書です。『花の王国』の、園芸植物、薬用植物、有用植物、珍奇植物の4冊はどれもおもしろく、今でも見はじめると夢中になってしまいます。そんな、荒俣宏が、どうしてパイナップルの生り方を知らないか?信じられません。

「物書きなんてそんなものだよ」と、息子。「本と現実とは別なんだよ」
「そんなあ。だって、絵をいっぱい持っているんだから、いやでも覚えるでしょう」

そして、この本を、捨てようかどうしようか、ぱらぱらとめくっていたら、ありました!




なんて、間がいいんでしょう。パイナップルの絵です。

池澤夏樹が、自然保護運動が腰砕けになるのは、机上の議論ばっかりで、保護活動家が現実を知らないからだ、と言っていましたが同感です。
熱帯林保護の会議のためマレーシアのペナンまで行っても、目と鼻の先にある熱帯林には足を踏み入れない、世界の活動家をたくさん見ましたから。



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