2011年8月7日日曜日

ところ変われば、表情が変わる



実物を見たことがないのに、花月(Crassula ovata)に憧れていた時代がありました。
当時、ドイツのインテリア雑誌『シェーネル・ボーネン』を見ると、おしゃれな部屋によく花月の鉢が置いてありました。
日本でよく見かける盆栽型ではなく、肉厚の丸い葉がついた枝が、思い思いの方向に、すっと伸びているような形でした。

1973年ころでしょうか、当時住んでいた家の近くに、庭に温室をつくり、いろいろな花を育てているご夫婦が住んでいました。いつも通りから、興味深く庭をのぞいていたら、ある日花月の鉢を発見しました。実物を見るのは、初めてでした。
面識もないのにすぐ飛び込んで、見せていただき、後に挿し木したのを分けていただいたりしました。なんでも息子さんが、老舗の花屋さんである日比谷花壇に勤めていて、日本に初輸入で珍しいからと、植物好きの両親に持ってきてくれたということでした。

それから十年も経たないあいだに、花月は日本の国民的な観葉植物となりました。「金のなる木」とも呼ばれ、五円玉を通されたりして、一家に一鉢、どこでも見かける植物になりました。

その花月が、1990年頃でしたか、ナイロビの街を歩いていたとき、生垣として植えられていたのにはびっくりしました。花月は南アフリカ原産ですが、
「ああ、花月にもふるさとがあったんだ」
と、改めて植物の旅した道の長さを感じました。




その頃とは、ものの流通度が飛躍的に違う昨今ですが、数年前、友人のSさんの家でミルクブッシュ(Euphorbia tirucalli)の鉢植えを見た時もびっくりしました。
「えっ、こんなものが鉢植えになるんだ!」

ミルクブッシュは、折ると白い液が出てきます。それに毒が入っているのか、家畜が食べないので、インドやタイでは、よく生垣に使います。
というのは、庭の片隅に家庭菜園をつくっていて、もっともたいへんなのは、放し飼いにされている家畜から、どうやって野菜を守るかということだからです。
刺のたくさんある植物を植えるか、動物の嫌う植物を植えるのが、最善です。




生垣で見ても、なんの関心も持っていなかったミルクブッシュですが、この茎と小さな葉、日本で見ると別のかわいさがあります。
Sさんにいただいて育てていたミルクブッシュ、ずいぶん大きくなっていましたが、昨年霜に当てて木が弱ってしまいました。
仕方なく、まだ元気そうな枝を折って挿しておいたら、ちゃんと活着しました。
大きいのも見事ですが、小さいミルクブッシュも、なかなかかわいいものです。




今年は、ホームセンターで、
「小さいポットに種を蒔いてみたら、いっぱい出てきました」
といった趣の、やたら小さい苗がいっぱい生えているオジギソウ(Mimosa pudica)を見つけました。

オジギソウはブラジル原産ですが、タイでは雑草化していて、田んぼの畦を覆っていました。刺が素足には嫌な草で、もちろん、誰も愛でたりはしませんでした。

土におろしてやると、すくすく育っています。
田んぼで見るオジギソウは、こんなに柔らかい葉っぱではなく、硬そうな、乾いた色の、もっと生命力の強そうな草でした。




草むしりすると、律儀に葉を閉じるところは、変わりませんが。


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