2017年6月26日月曜日

あひるの大航海

 
以前、浜辺で拾った、ソフトビニールのあひるです。
お風呂で遊ぶための小さなおもちゃですが、浜辺に漂着するあひるには、じつは壮大な物語が、秘められているのです。

1992年1月、香港からアメリカのワシントン州のタコマに向かっていたコンテナ船が悪天候に巻き込まれ、約三万個の、中国製のあひるのおもちゃ(ラバー・ダック)などを積んだコンテナが、太平洋上に落下しました。
破損したコンテナから外へと飛び出し、漂流を開始したあひるたちは、そのまま潮流に乗って南下し、三分の二がインドネシアやオーストラリアへ、そして南米沿岸に漂着しました。そして、残りの三分の一は、北米大陸に沿って太平洋を北上しました。
 

あひるたちは、一年後にはアラスカに到達していることが確認され、さらに西へと進んだものが三年後には日本に漂着しました。太平洋をほぼ一周したのです。
そのうちの一部は、ベーリング海峡を抜けて北極海に入りました。氷に閉じ込められたまま移動したと見られ、八年後の2000年には、大西洋域に達したあひるたちが、氷から解き放たれて漂流を再開しました。
そして、2003年には、北米大陸の北大西洋岸で確認されるようになりました。
2007年、イギリスのタイムズ紙が、あひるはアイルランド沿岸に向かっていると報じました。

この、あひるの大航海は、海流学者や気象学者の注目を集め、世界の潮流の動きやそれが気象に及ぼす影響の研究に、多大な貢献をすると期待されました。
海を漂流したあひるたちは、紫外線と海水によって退色しているものの、コレクターに珍重され、またアメリカでは、海岸で拾った人に、調査会社から報奨金も出されています。


うちのあひるは、2000年代になってから拾ったものですから、そんな大航海をしてきたあひるとは違うかもしれません。
でも、プチ航海を経て、我が家にたどり着いたものです。

1992年に海上に躍り出たあひるたち、あれから四半世紀経ちましたが、今でも狭いお風呂に閉じ込められるのを嫌がって、大洋上を漂い続けているあひるも、いるのかもしれません。


 


6 件のコメント:

karat さんのコメント...

すごい!。そんな壮大な物語があったなんて…。
最初の写真を、いたわりと尊敬のまなざしで再度見てしまいました。

さんのコメント...

karatさん
日焼け具合からして、うちの(?)あひるは「ちょい旅」ですから、そう尊敬のまなざしで見ないでください(笑)。
あれから、私も面白そうだなと思って、太平洋上であひるをリリースする計算をしてみました。一羽が300円としてもあひる代だけで9百万円、こりゃ無理でしたね(笑)。
でも、海って、いろいろなものをいろいろなところに届けていますね。

karat さんのコメント...

海辺で色々貝殻や石を拾うのが好きですが、海が遠いのでそうちょくちょくは行けません。一番近い由比ガ浜などで陶器のかけらも見つけますが、陶器のかけらはそれが古いものか、ついこないだ誰かが捨てたものか区別がつきません(^^;)。それに陶器のかけらが何で海辺にあるのか?浮いているわけではないので、海の底からうねりとかに押されてずいぶんと長い時間かかって浜辺にたどり着くのでしょうかね?不思議です。

さんのコメント...

karatさん
陶片に関しては、ビーチコーミングしている方なら誰でもその方に訊くという陶片狂さんという博識の方が、「陶片窟日記」(http://touhen03.exblog.jp/)というブログを遺していらっしゃいますが、惜しくも昨年、若くして急死されました。
私もよくは知りませんが、河口とか、昔の捨て場とか、「くわらんか茶碗」のように、浜で商いをしていて捨てたり落ちたりしていたもの、難破船から出たものなどいろいろあるようです。
というわけで、古いものは出易い場所があるようですが、砂などが堆積したところから、台風などでえぐり出される場合もあるようですよ。
陶片は、角が取れたのがいいですよね。形のまま出てきたら、もっと嬉しいけれど(笑)。染付けの色などで、時代がわかるものもあります。昔は鮮やかな青(コバルト)はありませんでした。まず手描きかどうか、と言っても現代もので手描き風なのもありますからね(笑)。

karat さんのコメント...

あー、なるほど。ありがとうございます。今度見つけたらじっくり見てみます。私が見つけるのはだいたい小さなかけらです(^^)。

さんのコメント...

karatさん
私も小さなかけらしか見つけたことはありません。それも、古いものじゃないしね。でも、碍子とか、陶片とか、拾うと嬉しいです(^^♪