2013年9月1日日曜日

藍、いろいろ

藍は、染めてそれを空気にさらすと藍色になる草の総称で、その土地土地で、藍染めにはいろいろな草が使われてきました。
藍壺のある益子の紺屋さんの庭先では、いろいろな藍を育てていています。一年中見られますが、今頃の季節、藍たちは一番元気です。


南アジアから東南アジアで使われるインド藍(Indigofera tinctoria L.、マメ科)です。
インド藍はインド原産、熱帯のいろいろなところに生えています。もっとも堅牢な藍が採れるため、かつてイギリスが自国の工場製品の粗悪な化学染料染めの布を売るために、根こそぎ絶やすよう命令しました。もし見つかったら罰せられたという悲しい歴史を背負った植物です。
かのナポレオンも、ヨーロッパの藍を守るため、インド藍を根絶やしにしようとしたことがありました。

藍を英語でインディゴと言いますが、もともとはこの植物を差しました。
似ている藍に、ナンバンコマツナギ(Indigofera suffruticosa) があります。
 

日本のタデ藍(Polygonum tinctorium、タデ科)です。中国、あるいはインドシナ原産で、日本には古墳時代の終わりごろ渡来したようです。


琉球藍(Strobilanthes flaccidifoliis、キツネノマゴ科)の原産地は、インドのアッサムとも、タイ、ビルマ周辺とも言われています。東南アジアの山岳地帯に住む人々は、この藍で染めています。中米のメキシコでもこの藍を使っています。


ウォード、大青(Isatis oblongata、アブラナ科)は、ヨーロッパを中心に栽培されましたが、原産地は中央アジアからステップ気候のヨーロッパにかけてと言われ、シベリア、モンゴル、中国北部から北アフリカのモロッコまで広く分布しています。

藍は四千年の昔から、染料として使われてきました。純白の布は、どこの文化でも清浄なものとして尊ばれましたが、汚れやすいという欠点があります。
そこで、いろいろな染料で染められてきましたが、さまざまな色の植物染料は、絹、毛などという動物繊維は染まりやすくても、麻、木綿などの植物繊維は染まりにくいという欠点がありました。
ところが、藍は動物繊維にも植物繊維にも染まりつきやすく、しかも洗濯に耐え、日光にあたっても褪色しない強い染料だったので、世界中で愛されました。

しかも、染める回数によって、薄い色から濃い色まで出せ、他の色と重ねることによって、さらに複雑な色も表現できました。
汚れが目立たず、蚊などの虫よけにもなるので、世界中の庶民の服が藍で染められていたと言っても過言ではないほどです。

でも近年は、植物藍が、より簡単に染められる鉱物藍に取って代わられています。 ジーパンはその鉱物藍によって染められています。




6 件のコメント:

mmerian さんのコメント...

いろいろな種類の藍染め植物があって当然なのに、全然知りませんでした。勉強になりました!我が家の庭にもタデアイが植えてあります。子供たちが葉っぱをちぎって石でたたいて遊びますが、本格的に使用したことはありません。先日、若いお母さんが集まり織物を学ぶ姿を見ました。織り機から作るようです。震災後移住した若者たちが新しい文化を作ろうとしていろいろやっています。

さんのコメント...

mmerianさん
含藍植物はそれ自体が藍色の色素を持っているわけではなく、空気中の酸素と出逢う(酸化)ことによって、藍色になります。そんな植物が世界中で大切にされてきたのは、おもしろいことです。
ナンバンコマツナギは日本でも雑草化しているらしいので、宮崎のあたりだと生えているかもしれませんね。
動く人たち(この場合は移住者)が新しい文化をつくっていくことはよく見られることですが、植物同様、人もなかなかたくましいですね。

mmerian さんのコメント...

ナンバンかどうかは解りませんが、帰化植物のコマツナギはどこにでも生えています。まさか、藍染め植物なんて知っている人は少ないはずです。今度染色をする友人に聞いてみます。

さんのコメント...

mmerianさん
素敵な染め物ができたら、知らせてくださいね♪

Shige さんのコメント...

インディゴノ元はマメ科だったんですね。知りませんでした。
どんなマメができるのでしょうか?

さんのコメント...

Shigeさん
元はというか、熱帯ではマメ科が多いです。堅牢なので、あちこちに伝播して、日本でもインド藍の脅威を感じたことがあったようです。日本の藍も、守られていたのですね。
豆は、こんなマメ科植物に共通の細くて長い莢ですが、まとまって鈴生りに生ります。道端に生えたりしていると嬉しい草です。