くちなし

くちなしの実を見ると、小さいころの年の瀬を思い出します。
注連縄につけるウラジロを採りに祖母と山に行った帰り道、山道の道端や谷川沿いにあるくちなしが、ぽつぽつと実をつけていました。
実を採ろうとしても、たいていは灌木の茂る傾斜地で足場が悪く、採れるのはほんの二つ三つでした。

ハローウィンには何の思い入れも関心もないのに、クリスマス飾りは好きというのも、小さいころの思い出が絡まっているからかもしれません。
クリスマスツリーが欲しいと言うと、祖母はいつも嫌がりました。日本人がクリスマス飾りなどしなくていいというのが、祖母の言い分でした。しかし、それでも粘っていると、渋々クリスマスツリーを探しに、山に一緒に行ってくれました。
「モロ」と呼んでいた小さなとげのような葉がついた木を探しましたが、大きすぎるのや、木姿がよくないの、生えている場所の足場が悪いのなどなど、満足できる木はなかなかなくて、１メートルほどの木を切って持ち帰るまで、時間がかかったように記憶しています。

モロは、ネズ、ネズミサシ、ムロとも呼ばれている、ヒノキ科の木です。

そうやって手に入れたクリスマスツリーには、ほんの少しだけ持っているモールのオーナメント以外は、画用紙に描いて裏表貼り合わせた手づくりのオーナメントと、雪に見立てた綿を飾っていました。

さて、栗きんとんをつくるために、くちなしを入れてゆでたサツマイモ、かなり入れたのに、そう色よく茹で上がりませんでした。
でも、おいしく出来上がりました。
ひところ、サツマイモを使わずに、栗だけでつくった栗きんとんの方を珍重していましたが、年のせいかいまは、サツマイモで絡めた栗きんとんの方が好きです。